鼻のかたちは――鼻根の正中天から鼻が人中(じんちゅう)の上辺にたっするまで(つまり、距離)と、小鼻の、いちばん張り出したところまでの距離の比率によってちがってくる。
ヨーロッパ系の女性の鼻は、ほっそりとしているほうが美しい。ところが、南方系の人種では、だいたい幅がひろい。日本人をはじめ、アジア系の女性は、だいたい中間的といえるだろう。
私たちのエロティシズムの観念において、女性が誘惑的な理由の一つは、彼女たちがかならず見えない部分をもっているからである、という。それはしばしば(女性自身によって)意識的に隠された部分であることが多いが、鼻は隠されることがない。
いつも見えているものが、いつもエロティックに訴えてくることはない。だから、日本の作家はわざわざ鼻を描写することがないとも考えられる。
ただし、ブルカで顔をつつんでいる、中東の女性たちの、鼻はおそらく今後とも文学作品に描写されることがないだろう。
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