1943〈少年時代 29〉

バルザックは「従兄ポンス」で書いているように、「ある先天的な感情、つまり好奇心という、人間の性質のうちでもっともつよい感情」が異常なほどつよかった。好奇心はそれこそ作家の資質を形成するもっとも重要な要因をなしていた。

小学3年生の子どもの内面に、なぜか深い変化が生じた。
それまでの、平穏無事な世界から、不意に、すべて無関心からできている別の世界に落ち込むようなことがどうして起きるのか。
すべての事柄から、いきなり日常の効果が失われ、そこに自分の姿を認めさせてくれるものが消滅して行く。

私は、自分の置かれた環境に不適応感をもった。そして、自分が、ある種の人びとからいつも距離をおいた形で見られていることに気がついた。
このことは、後年になっても私に影響したと思う。

 

 

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