川村 正美

突然の電話。授業で聞きなれた中田先生の声だった。

「猫がほしいのです」

子猫の時期ではないし、あまり可愛い猫がいないけれどと
知人ボランティアさんが送ってきた画像を印刷して中田先生に郵送。

すぐにお電話が来て、その猫さんに即決。
電車でボランティアさんから預かった四カ月の猫のお届けをした。

駅にはお孫さんも来ていたけれど、
家までのお届けが原則なので・・・と困る中田先生のお宅に上がりこんだ。

奥様にお嬢様、想像とは違ってサバサバしている女性たち。
中田先生の知らなかった一面をのぞかせていただいた気がした。

2012年12月23日のことだった。

この頃、私の最初の猫ルビーが肛門癌の手術を5回も繰り返し
家を離れることもできない状況だった。

中田先生へのこのお届けが、ルビーへの執着から私をほどいてくれた気がした。
そして、25日の朝方、ルビーが天に召された。

翻訳の勉強はもちろん、中田先生には不思議な力で導いていただいた。
投げかけられる一言が、まさにメンタルサポートになっていた。

この日、白内障の手術をして本が読めるようになった喜びを口にした中田先生の表情が忘れられない。今は、最愛の奥様と再会していることだろう。

とてもこわがりだからビビと名付けられた猫は、中田先生の生活に幸せを運んでくれたと信じている。

中田先生と猫は、私にとって、とても大きな存在だった。

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