城福 真紀

 

 その日の遠出は皆でバスに乗り込んだ。バス停を下りて少し行くと立派な門構えのお宅があり、住人である先生のご親戚の好意でお庭にシートを広げ、お昼を食べた。何代か前の先祖を描いたという絵も見せていただき、目の前にいらっしゃる当主と面影がよく似ているのに驚いて、遺伝子がたしかに継承されていくことに思いをはせた。おいとましてからアスファルトの広い道を皆でおしゃべりしながらしばらく歩く。すると先生がいきなり道の脇に入っていかれた。山の斜面の道なき道はショートカットになるらしい。山を抜けると畑があり、細いあぜ道を列になって進んだ。生け垣をぐるりと回り込んだ先に、中田家のお墓があった。

 先生が集まりの後の宴会で具合が悪くなられ、救急車で運ばれたのはしばらく前のことだった。検査では異常なく、先生はあいかわらずかくしゃくとしておられたが、その時にお考えになったのだろう。風が強くて束のまま火を点けたお線香がメラメラと燃え上がり、「あちゃちゃちゃ」と皆で騒ぎながら分け合ってにぎやかにお供えした後、大きな石碑の横に立ってお話をされる先生の声を聴きながら、「これは先生の生前葬なのだ」と思った。

 先生が旅立たれたのはそれからおよそ10年後。急なお別れだった。お元気なうちにご自身の先導で皆をお墓参りに連れて行ってくださった先生。先生らしい、見事だと思いつつ、いつもついていくばかりでふがいないままだった自分にうなだれてしまう。

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