中田先生とは…… | - そうおっしゃって先生は翻訳以外の勉強を先生がお作りになった私塾『SHAR』でやってこられた。芝居をやった。何人かで話し合いながら小説、絵本を書いた。そして今は俳句に挑戦している。
なかでも「芝居をやる」と聞いたときはたまげた。ド素人の大人たちが『不思議な国のアリス』を演じるという。「なんで芝居?」みんなそう思っただろう。わたしたちの戸惑う顔を見て先生はニンマリとした。わたしたちに考えさせる。舞台はどう作るの? 間のとりかたは? 台詞、衣装、動きは? ―(中略)― 「このごろは物忘れがひどくなってね、アハハ」と先生は笑う。しかし、背筋とぴっと伸ばし前を見据えるように歩く姿は先生と出会うことができた十年前と少しもお変わりにならない。それどころか、先生のエネルギーは静かに燃えている。先生は十年という年月をかけて、フランスの俳優であり演出家のルイ・ジュヴェの評伝を書きあげた。ジュヴェの生涯に迫りながら二十世紀という時代を描いた大作『ルイ・ジュヴェとその時代』。ページをめくるとそこにみなぎる先生のパワーに圧倒される。
(『nexus』No.46より抜粋)
笠井 英子 -
2007/12/21 |
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