私は一茶をかなり読んだ はずである。
ただし、読んでもすぐに忘れてしまう。
雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る
門の蝶 子が這へば飛び 這へば飛び
こんな句ばかり思い出すのはわれながらあきれる。
おなじ一茶の、おなじ蝶でも、
蝶が来てつれて行きけり 庭の蝶
といった句のほうが自然でいい。
蝶 見よや 親子三人寝て暮らす
この句、あまり好きではないが、何度か声にのせて読んでみると、一茶のふてぶてしさ、哀れさが見えてくる。おなじ蝶でも、丈草の
大原や 蝶の出てまふ朧月
こうなると一茶にはない趣向。おぼろ月夜に蝶が舞うかどうか、そんな詮索はヤボの骨頂。花のファンタジーとして読んでもいい。