あるインタヴューで、ヘミングウェイが語っていた。
35年前の、よごれた古着を洗濯するみたいな昔の文壇の楽屋ばなしなんか。おれはきらいだね。
エズラ・パウンドのことを話したときの台詞。相手は、たしか、ジョージ・プリントンだったと思う。
これを読んだとき、いかにもヘミングウェイらしいなあ、と思ったおぼえがある。
私は文壇と関係のない仕事をつづけてきたので、「昔の文壇の楽屋ばなし」などまるで知らない。だから語りようもない。
ただ、私が出会った少数の先輩たち、同時代の作家や評論家のことは、いまでもよく思い出す。その人たちを私は尊敬の眼で見ていたから。
むろん、私の嫌いな連中もいた。向こうも私のことを嫌っていたのだからお互いさまだが。