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宇尾さんの訃を知った翌日、劇作家、西島 大の訃を知った。若い頃、私は彼の芝居を演出した。その劇評が「芸術新潮」に出たことも、いまとなってはなつかしい。
私の知っている人たちがつぎつぎに鬼籍に移ってゆく。無常迅速の思いがある。
佐藤 正孝君が亡くなって、やがて竹内 紀吉君が亡くなった。そして、今、宇尾さんの訃を聞いた。幻化夢のごとし。私にとって、すべては茫々たる夢に似ている。
かつて、あなたは語った。
生きている者も、死んだ人もそれぞれのばしょに戻ってゆく。静かにめぐる輪は、この場から立ち去る前の所作ごとなのだろう、と。
宇尾さん。
仲間うちで、いつも楽しく語りあいながら、あなたはいつも何かを学びとろうとしていた。作家としてのあなたの誠実さは、あなたの作品にいちだんと光彩をそえるものだった。そのことを、私はほんとうにありがたいものに思う。
いま、おのがじし心のままに別れを惜しみ、在りし日のあなたのことを思い浮かべて別れよう。
そして、私はあなたに告げよう。
宇尾さん、ながいこと、ありがとう、と。
※画像は宇尾房子さんと竹内紀吉君