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お正月。かつては、一杯一杯復一杯と、ひたすら酒を飲みしこる私だったが、いまはわずかに口にふくむだけで、終日、酔うては頽然として臥して寝正月。

処世若大夢 胡為労其生
(しょせい 大夢のごとし なんすれぞ その生を労する)

などと寝言をいう。
覚めきたって、庭前をかえりみれば、一鳥、花間に鳴くことになる。詩人は考える。借問す、これ何の時ぞ。李白の詩、「春日酔起言志」である。
そこで・・・春風、流鶯は語る、ということになって、詩人は、これに感じて嘆息せんと欲す。また、酒を飲む。

對酒還自傾 浩歌待明月 曲盡巳忘情
(酒に対して また みずからかたむく 浩歌 明月をまち
曲つきて すでに じょうをわする)

思わず、李白の詩に感じて嘆息せんと欲す、という心境になる。

貝原 益軒先生も いわれたではないか。
口中に入るもの、すべて薬と心得よ。食しかり、酒またしかり、と。
ろくに酒も飲めないのだから、生きていておもしろいはずもない。

ただし、わが庭前、一鳥、花間に鳴くこともない。
そこで寝正月。

うつし身ははかなきものか 横向きになりて 寝(い)ぬらく 今日のうれしさ

古泉 千樫の歌。まさか寝正月を歌ったものではないが。