奇人、変人が好きである。
いつの時代か忘れたが、中国に、赫隆という人がいた。非常な多読であった。それこそ万巻の書を読んだのだろう。
七月七日の昼ひなか。赫隆さんは家の外に出て、気もちよさそうに昼寝をしていた。
そこに、友だちのひとりがやってきた。
「おやおや、赫隆先生。この暑い日ざかりに外に出て寝そべって、いったいどういう了見なんだ?」と訊いた。
赫隆さんは、気もちよさそうに、薄眼を開けて。
「いやぁ、おなかの本の虫干しなんだよ」
夏の日中、読書に倦んで、樹陰に竹の腰掛けか何かを出して、のうのうと寝そべっていたら、さぞ気もちがいいだろうなあ。
私は赫隆さんのように多読ではない。異常気象で、酷暑がつづいたりすると、本を読む気力もうせてしまう。ただ、ぐったりして、何を考えるでもなく喘いでいる。
昔は夏が好きだったので、たいてい大きな仕事にとりかかっていた。『メディチ家の人びと』も、『ルイ・ジュヴェ』の、ラテン・アメリカ巡業も、真夏、汗を流しながら書きつづけていた。
最近、また新しい仕事に集中しているのだが、日さがりの樹陰に竹の腰掛けか何かを出して、のうのうと寝そべっていられる余裕もない。
七月七日。
私は牽牛織女の物語よりも、赫隆さんの生きかたを羨むばかりである。