映画の撮影には困難をきわめた。クランクアップしても、打ち上げをする余裕がなかった。現地から逃げるようにしてスタジオに戻った。
撮影、録音、編集をすへて終わって試写にかけたとき、会社の人々は欣喜雀躍した。
だが、検閲が残っている。
「いい映画です」
ゆっくり担当官がいった。
「外国人にはウケるでしょう」
担当官はつづけた。
「しかし、外国人が喜ぶのはかならずしもいいことではない」
主演女優は、頭がくらくらして、担当官の声が遠のきはじめた。
「この映画は国外では上映してはならない。国内でならかまわない」
国内各地で上映された日、観客からは絶大な称賛の拍手が起きた。しかし、それも束の間、当局から、全国の上映館に、即日上映禁止、フィルムの回収が通達された。
中国の映画女優、劉 暁慶(リュ-・シャオチン)の回想を読む。
残念なことに、「芙蓉鎮」、「西太后」しか見たことがない女優さんだが、彼女は自分のスキャンダルを臆せずに語り、政治に翻弄されていた中国映画界の裏面を知ることができる。