冬の日。
冬の日の晴れたる空の底深く潜(ひそ)みてものをおもふべきかな
--金子 薫園
いい短歌だと思う。「ものをおもふ」は、ほのかに恋の含意。想う、ということばを忘れてしまった今の私たちは、思う、としか書かない。
冬の日、よく晴れた空を見つめながら、私の内面にひそむ想い。
黄なる葉の落ちつくしたる木の間より見る大空の青のつめたさ
--尾上 柴舟
これは自然詠で、風景としては平凡だが、くり返して口にのせていると、もう私たちが気がつかない空の青が心に見えてくる。
場所はどこでもいい。公園でもいいし、旅の途中で見かけた風景でもいい。
籠居(こもりゐ)の庭冬さびて愁はしく 雲のかげ落ちおちては去るも
--中村 憲吉
憲吉としては、それほどいい作ではない。どうも下五、「落ちおちては去るも」が気になる。ただ、「籠居(こもりゐ)」とか、「冬さびて」とか、「愁(うれ)わしく」といったことばが消えてしまったことを惜しむために書きとめておく。
おなじ憲吉に、
曇る日のこころを傷み野の空に虚(うろ)吹く風を寒みつつ行く
という一首があるが、こういう歌にははじめから心を動かされない。作者としては、なにか切実な思いをこめての作だと思うけれど。