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マリ-・ルイ-ゼ・カシュニッツというドイツの女流作家について何も知らない。旧プロシャの貴族出身。夫はウィ-ン出身の考古学者、美術史家。
戦後に作家として登場し、ゲオルグ・ビュヒナ-賞など多数の文学賞を受けた。
『死の舞踏』という戯曲があるという。戦時中に書かれて、1946年に初演。ドラマとしての盛り上がりと緊迫感に欠け、テ-マもはっきりせず、退屈な芝居だったという。 だが、ほんとうに失敗作だったのか。戦後のドイツ演劇の傾向にあわなかったために、失敗作と見られたのではないかと思う。
なにしろブレヒト、ツックマイヤ-程度の劇作家がドイツ最高の劇作家でまかり通っていた「戦後」、オット-・フリッツ・ガイラルト、マキシム・ガレンティン、オット-・ラングなどが最高の演出家だった時代に、カシュニッツのような、精緻、繊細な作家の芝居が注目されるはずがない。

なぜ戯曲を書いたのか、そのあたりは想像がつく。芝居が成功して、舞台に並んだ役者たちにソデからひっぱり出されて、万雷の拍手に迎えられ、ぎごちなく頭をさげる。そういう夢が、別の短編で語られているから。だが、舞台の夢は果たせなかったにせよ、放送劇の分野で成功した。
カシュニッツには、15編のラジオ・ドラマがあるという。彼女の短編を読んでから、こうしたラジオ・ドラマをふくめて、ほかの作品を読みたいと思う。

人間の悲劇を見つめ続けた作家。だが、それを前面に打ち出すのではなく、いつも非在や、あやかしに眼を向けながら、みごとな密度で短編が成立している。

カシュニッツは、1974年、ロ-マで亡くなっている。

私にとっては忘れられない作家になった。