255

登山に熱中していた時期がある。その頃の私のスタイルは、ア-ミ-・キャップ、黒いカッタ-・シャツ、黒いズボン。ヴェトナム戦争で放出された迷彩服のジャケット。冬はその上に50年代にはやっていたスキ-用のアノラック。当時でも、まるっきり「流行おくれ」(デモド)スタイルだった。
当時の私のカリカチュアには、「まるで忍者スタイル!」というキャプションがついていた。
名もないような山を地図でさがしては登っていた。そういう山には整備された登山道があるわけではない。いきなり崖に出て動きがとれなくなったり、地図上の峠が実際には荒れ果てて歩けなくなっていたり。そんな山ばかり登っていた。誰も知らない、見捨てられたような山でル-ト・ファインディングや、ビバ-クするのが性分にあっていた。
日が暮れる頃、山から麓に向ってとぼとぼ歩いていると、よく村人に「ご苦労さんです」と声をかけられた。営林署の役人に間違えられたらしい。

*「NEXUS」43号(06.2)参照