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江戸に近いせいで、上総のわらべ唄もよく似ている。たとえば――
カラス、カラス、勘三郎。どこサ行った。カンゴ山にムギまきに。何升まいてきた。一升五合まいてきた。あとあじ(何を)した。父母(ちちかか)がみんな食ってしまった。
別のフレーズもある。
カラス、カラス、勘三郎。父は熊野へ鐘たたき。一日たたいてコメ三合。
夕暮れ、ねぐらにいそぐ烏にむかって、
カラス、カラス、あとになると、ヨゴくるど。
このヨゴは怪鳥。江戸末期の社会不安が響いているような気がする。