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中村真一郎は、戦後『死の影の下に』(1948年)で登場した。その出版記念会があって、無名の私も出席したが、先輩批評家の中村光夫が、席上、辛辣ないいかたで挨拶した。
「中村(真一郎)君は、この作品を発表せず筺底にとどめておくべきだった」と。
私はこれを聞いたときから、中村光夫をひそかに軽蔑するようになった。