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江戸の女……。
音もなく襖が開くと、敷居ぎわに中腰にかがんで、眼もあやな女があらわれる。
思わずゴクリと生唾をのむ客の前に、すっと両膝をついて、三ツ指。ぬめぬめと濡れたようなつぶし島田の頭をさげて……。
子どもの頃、私の住んでいた本所、小梅町に、そんな「江戸の女」がまだ生きていた。