最後に、「SMASH」に関係のないことを書いておく。
今年(2014年)のエミ-賞にノミネ-トされた作品は、質のいい作品がそろっているという。
ただし、あい変わらず、刑事ものでは「トルー・デテクティヴ」、犯罪ものでは「ブレイキング・バッド」といった作品が有力視されている。
「トルー・デテクティヴ」は、マシュー・マコノヒ-、ウデイ・ハレルソン。
「ブレイキング・バッド」は、ケヴィン・スペイシ-。
いずれも主演男優賞の候補という。
ただし、ミステリー部門で、「SHERLOCK シャーロック」が、TVムーヴィーの作品賞にノミネートされている。翻訳家の岸本 佐知子が、「SHERLOCK シャーロック」のおもしろさを教えてくれたので、私もこの作品に関心をもっている。
授賞式に、イギリスの俳優、ベネディクト・カンバ-バッチも出席するとか。
こういう事件が表面にあらわれることは少ないが――「SMASH 2」のプロデューサーたちは、あい変わらず人気が低迷しているため、このセクハラ事件をとり入れたらしい。
もう一つ、「SMASH」に関係のないことを書いておく。
これは、2013年1月、ロシアで起きた「ボリショイ・バレエ」の芸術監督、セルゲイ・フィーリンが、ダンサーの、ドミトリチェンコに襲われて、硫酸を顔にかけられた事件を思わせる。これは、アメリカでもヨーロッパでも大きく報道されて、一般人の耳目を聳動させた事件だった。
「ボリショイ・バレエ団」のプリマだったアンジェリーナ・ボロンソワが、芸術監督にうとまれ、「白鳥の湖」の主役から下ろされ、それ以後、全てのレパートリーからはずされるという、ひどい冷遇を受けた。捜査関係者たちは、アンジェリーナが、ドミトリチェンコに芸術監督、セルゲイへの復讐を依頼したのではないかと疑った。
この事件の背景に――
「ボリショイ・バレエ」の芸術監督、セルゲイ・フィーリン自身も、一流のバレー・ダンサーだったが、数年前に、まだ「バレエ学校」で修行中の若いアンジェリーナ・ボロンソワに目をつけた。自分の「バレエ団」に入団させるという口実で、肉体関係を要求したが、アンジェリーナは拒否した。やがて、アンジェリーナは、「ボリショイ・バレエ」で、頭角をあらわす。
一方、セルゲイ・フィーリンも、バレーの現場から引退したが、「ボリショイ・バレエ」の芸術監督に就任した。彼は、「ボリショイ・バレエ」の改革をめざして、アンジェリーナの役をつぎつぎにアンジェリーナの同僚バレリーナ、オルガ・スミルノワに移した。
それまでアンジェリーナの「持ち役」だった「白鳥の湖」も、オルガに奪われた。
この事件の審理がつづけられるなかで、オルガはセルゲイと肉体関係をもっていたことが明るみに出る。そればかりか、ほかのプリマたち、タチアーナ・ボロチコワ、ナターリア・マリニア、マリーア・ヴィノグラードワたちが、いずれもセルゲイ・フィーリンに肉体関係を強要されたり、実際にセックスしたことが明るみに出た。
「SMASH 2」のドラマターグ(プロット構成者)は、現実に進行しつつあるこの「ボリショイ・バレエ」事件を、さっそく利用したのかも知れない。(「ボリショイ・バレエ」事件は、13年12月結審。ドミトリチェンコは、傷害で禁固六年。犯行をそそのかしたのは、意外にも、オルガ・スミルノワと判明した。)
いつか、「SMASH」について思い出すことがあるかも知れない。
終わりよければすべてよし。
(2014年8月 記す)