歳末。
ふと、口ずさむ一首。
『働かぬゆゑ、貧しきならむ、』
『働きても、貧しかるべし、』
『ともかくも、働かむ。』
作者には失礼だが、笑ったね。ただし、嘲笑したわけではない。しがないもの書きとしては苦笑するしかないが、自嘲の笑い、または羞恥の笑いでもあった。
私が貧乏なのは、「働かぬゆえ」に違いない。
しかし、いくら働いても貧乏だろうなあ。
最近は、ともかくも働こうという意欲がない。
さて、『働かぬゆゑ、貧しきならむ、』と、『働きても、貧しかるべし、』にも、おなじようにト-トロジックなものが感じられないだろうか。私の笑いは、そのあたりに向けられている。
そして 同時に、これをしも短歌と見るべきか、という疑いもあった。羨望もまた。
いささか皮肉にいえば、こういう短歌を詠むことで歌人として生きることのできた時代のありがたさを思った。
作者は、土岐 哀果。
(つづく)