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自分の好きな女優を勝手に「発見」すること。私の場合、ほかのジャンルでもおなじことで、香港ポップスでも、王 菲(フェイ・ウォン)がシャ-リ-・ウォンとして登場した1992年にCDを聞いた。このときからファンになった。やがて、王 菲(フェイ・ウォン)から逆に、梅 艶芳、黄 鶯鶯、テレサ・テン、さらに戦前の白 光、チヤウ・シャンとたどることになった。誰もふれないが、ア-ティストとしての李 香蘭は三十年代の中国ポップスを代表している。

『ルイ・ジュヴェ』の第五部を書いていた時期、ジュヴェが劇団をひきいてラテン・アメリカを巡業した頃のことを書くために、ラテン音楽ばかり聞いていた。当時、シャキ-ラが登場してきたので、毎日「エストイア・キ」を聞いていた。あとになって鈴木 彩織がシャキ-ラのおなじアルバムを贈ってくれた。私がラテン音楽を聞いていることは誰も知らないはずだったので、偶然にせよ、彼女がシャキ-ラを贈ってくれたことにちょっと驚いたことを思い出す。

シャキ-ラはその後、世界的にブレイクする。

先日のサッカ-のw杯、フランスvsイタリアの優勝決定戦の開幕で、シャキ-ラが歌っていた。(このとき、プラシド・ドミンゴが『トゥ-ランドット』のアリアを歌っていた。)シャキ-ラの人気のほどがわかる。

しかし、いまの私はシャキ-ラに関心がない。

*注)鈴木 彩織は『ハリ-・ポッタ-ともうひとりの魔法使い』(メディア・ファクトリ-刊)などで知られている翻訳家。