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あるとき、小学校の同窓会があって、私も出席した。
長い歳月をへだてて少年時代の仲間に再会したのだか、みんなすっかり変わっていた。道ですれ違っても、お互いに同級生だったとは思わないだろう。
それでも、しばらく話をしているうちに、お互いになつかしい顔を思い出すことになった。
学校の前の駄菓子屋の息子も出席した。でっぷりして恰幅のいい初老の商人といった感じだった。席上、各自が挨拶したが、彼は、小学校でいちばんの美少女にあこがれていたことをうちあけた。みんなが笑った。クラスの全員がその少女にあこがれていたからだった。
私もずいぶん美少女を見てきたが、美少女ということだけでいえば、彼女ほどの美少女を見たことがない。人形のようなおもざしの優雅さ、その容姿の美しさでは、これほど非のうちどころのない、文字どおりの美少女といってよかった。
成績もよかった。いつも全校のトップクラス。
当然、全校で評判になって、クラスの全員がひそかにあこがれていたはずである。彼女が成人するまで待って、求婚しようとしている先生もいた、という噂もあった。

私の住んでいた土樋から先の越路に彼女の家があったので、たまにいっしょに帰ったり、ほんの少し話をしたことがあった。それだけでもうれしかった。
ただし、この美少女が私の初恋の人だったわけではない。