266

ブ-タンの首都、ティンブ-でDJをやっている若者のドキュメントを見た。
インドとチベットのあいだに位置している仏教国。いまでも経文が書かれた布の旗(ダルシン)が山々の峰に立ち並び、きびしい寒風に吹きさらされている。女性は丈の長いキラという服を着ている。
しかし、99年にインタ-ネットが導入され、テレビで外国のさまざまなプログラムを見ることができる。携帯電話も普及している。いまや生活も激変しつつある。外来文化と伝統のせめぎあい。ブ-タンでただひとりのDJの若者はビリヤ-ドをやる。そして新しい音楽(電子音楽)を紹介するパ-ティ-。しかし、客が帰ってしまって、はじめての音楽パ-ティ-は失敗する。夢やぶれた彼は店を両親にわたしてインドに旅立つ。
ブ-タンのような小国が古来の伝統をまもり抜くのはむずかしいだろう。否応なく西欧文明が席巻してゆく。そのせめぎあいのなかで、ヒップホップを紹介することがどこまで必要なのか。そう思う一方、彼は自分の国の音楽よりも、先進国のポツプスのほうがはるかにすぐれていると思っている。いわば確信犯なのだ。
テレビのドキュメントを見ていて、この若者が可哀そうになった。