京都のお坊さん、雲竹が、自画像らしいものを描いた。顔をあっちに向けた法師の絵だが、芭蕉に讃をもとめた。
芭蕉は答えた。あなたは、すでに六十を越えている。私も、そろそろ五十に近い。
「ともに夢中にして夢のかたちを顕す、是にくはうるに又寝言を以(もって)す」。
こちらむけ我もさびしき秋の暮
このとき、芭蕉、46歳。
いまや認知症に近い私の書くものはまったくの寝言だが、芭蕉翁の「若さ」におどろかされる。
私もときどきいたずら書きを描くことがある。顔をあっちに向けた女性のヌ-ド。これとても夢中にして夢のかたちをあらわしているつもり。ただし、誰も讃をつけてはくれないだろう。アンクロ-シャブルだから。