誰でも知っているほど有名だが、誰も読まない名作。たしかヴォルテールが『神曲』をあげていた・・・と思う。私は『神曲』は読んだが、ヴォルテールは読まない。
「貫一の眼は其全身の力を聚めて思悩める宮が顔を鋭く打目戍(うちみまも)れり。五歩行き七歩行き十歩行けども彼の答はあらざりき。貫一は空を仰ぎて大息したり。
『宜し、もう、宜し、お前の心は能く解つた。』
有名な小説の一節。誰でも知っているほど有名だが、誰も読まない名作。
大学で紅葉の作品をいちおう読んだけれど、批評家として論じたことはない。そこで、最近やっと『金色夜叉』を読み直した。紅葉は、短編のほうがずっといい。
『金色夜叉』がつまらなかったのは、文体のせいではない。貫一が五歩行き七歩行き十歩行ったとき、よく歩数をかぞえたなあ、とバカなことを考えたけれど。
岡本 綺堂さんのお墓のすぐ近くなので、ついでに紅葉さんのお墓に詣でた。
最近まで『金色夜叉』を読み直しませんでした。ごめんなさい、紅葉さん。