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しばらく前に、テレビで、ブロードウェイの劇場が軒並み休場している光景を見た。コロナ禍の現在、多数の舞台人、とくにミュージカルのアンサンブルが失業していることに心が痛んだ。

午後、ドキュメント、「ブロードウェイ、ブロードウェイ」(ジェームズ・D・スターン/アダム・デル・リオ監督・08年)を見た。
ブロードウェイ・ミュージカル、「コーラス・ライン」再演の出演者を選ぶオーディション。応募者は4千人。「コールバック」が続いて、第三次の審査で40人に絞られる。そのなかから、半数が契約される。激烈、かつ過酷な競争、緊張、失意、興奮、自信喪失、挫折が、このドキュメントにつぎつぎに描かれる。劇場ミュージカルのオーディションは、TVドラマ、「スマッシュ」でも描かれていたが、やはりドキュメントのほうが迫力がある。見ていて感動した。

こういうドキュメンタリを見て、現在のコロナ禍のブロードウェイを想像する。

まったく想像もできない。

もはや、二度と戻れない光景に違いない。私は、ポスト・コロナのブロードウェイが、「ブロードウェイ、ブロードウェイ」のブロードウェイに戻るのに、数年はかかるのではないか、と危惧している。いや、もっとかかるかも知れない。
ただし、悲観することはない。
これを機会に、ブロードウェイの地方分散化(デサントラリザシォン)が加速する。すぐれた才能が、各地で、狼煙をあげるだろう。

そうした動きがいくつも重なって、ブロードウェイは必然的に大きく変化する。
そういう期待が私の内部にある。

 

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