1757 〈1977年日記 4〉

1977年5月5日(日)

午前中に、「ミセス日本・美人コンテスト」というプログラムを見た。
審査員は、高峰 三枝子、和田 静郎、神和住 純、沖 雅也など。
美人がつぎつぎに出てくる。どこのコンテストでも優勝圏内に入るような美女ばかり。そういう美女たちが篩にかけられて、最終審査に残ったのは7人。いずれ劣らぬ美女ばかりで、最後の最後に優勝したミセスは、感激のあまり涙にくれていた。
外国のコンテストなら、優勝したミセスは、満面に笑みをうかべて投げキッスでもするところだが。
司会は、女優のT・T。
あきらかにミスキャスト。こういうコンテストをうまくとりしきって、場内の雰囲気を盛りあげたり、出場者の緊張をほぐしたり、あるいは、それぞれのミセスの美しさをたたえたりするのは、司会者の洗練されたことばやしぐさではないだろうか。ところが、T・Tの要領のわるいこと。
せっかく、すばらしいコンテストの司会を引き受けたのだから、コンテスタントを褒めたたえながら、あわせて自分の美しさもアピ-ルすればいいのに、ひたすら凡庸なコメントを並べるだけ。あきれた。
日本の女優は、あらかじめ、きめられたセリフをしゃべるしか能がないのか。それとも、はじめからそういう「演出」だったのか。

 

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1977年5月6日(月)

今日から、地下鉄、タクシ-などが値上げになる。私のように、いろいろ飛びまわっているもの書きにはかなり影響があるだろう。
景気の回復はまだはっきりした形をとらない。というより、庶民はたえず不況の影におびえながら生活して行くしかないのだろう。
成田空港の反対同盟の鉄塔が倒された。

夜、ルネ・クレマンの「危険がいっぱい」(The Love Cage/1964年)を見た。アラン・ドロンは29歳。共演のジェ-ン・フォンダが美しい。父がすぐれた俳優だったため、少女時代から父に対してひそかに対抗意識をもっていたらしい。ジェ-ンが勝気なお嬢さんといった役を演じると、内面のはげしさがむき出しになる。ヘンリ-は――「見せかけの権威のみか、理性もおれを裏切り、おれには娘があると、ただそう思い込んでいただけのことかも知れぬ」と「リヤ王」のようにつぶやいたかも知れない。

いつか、ジェ-ン・フォンダについて書いてみたい。書いたところで何もつかみとれないかも知れないが。