うれしいこともあった。
この夏、ブログを休載中、「ANAIS NIN Observed」というDVDが日本版「アナイス・ニン、自己を語る」と題して出た。これに私自身が出ている。
アナイス・ニンは、アメリカの女流作家。日本では、私の訳で「愛の家のスパイ」が出て知られた。
アナイスは少女の頃から書きつづけてきた膨大な「日記」で知られている。
アナイス・ニンについては、いずれ別の機会にとりあげるつもりだが――日本版「アナイス・ニン、自己を語る」については、ここでとりあげておく。
このドキュメンタリーは、ロバート・スナイダー監督による作品。この映画作家は、「ミケランジェロの生涯」(1961年)で、アカデミー賞・最優秀長編ドキュメンタリー賞をうけている。
このドキュメンタリーの原題は「Anais Nin Observed」だが、「Portrate of a Woman As Artist」という副題がついている。このタイトル通り、アナイスは「Observed」しているのだが、同時にこれは「Portrate」なのだ。映像作品として、「Observed」されるアナイスの魅力が表現者としてのポートレートとして私たちに迫ってくる。
私の「解説」は、このラストでわずかばかり顔を出しているだけで――友人の作家、山口 路子、翻訳家、田栗 美奈子、おふたりの質問に答えている体裁になっている。おふたりの質問にできるだけ真摯に答えようとしているのだが、あらためて見直すとアナイスの「解説」になっていない。おふたりの質問にヘドモドしているので、われながら出来がよくない。
だいたい、このドキュメントに出たのが間違いだった。作家がすっかり老いぼれて、何かつまらないことをモゴモゴしゃべっている。ただし、このDVDが出たおかげで、私の「在りし日の」姿が見られる……かも。(笑い)
鈴木 彩織(翻訳家)は、
「アナイス・ニン、自己を語る」拝見いたしました。
先生は恋する若者そのもので、とても若々しく映っていました!!
と書いてきた。たしかに、私はアナイスに恋をしている。鈴木 彩織にそう見えたとすれば、ちょっとテレくさいが、うれしい気がする。
このDVDには、日本のアナイス研究の第一人者である杉崎 和子先生が、おなじように山口 路子のインタヴューに答えているので、アナイスに関心のある人は、ぜひ杉崎女史の「解説」をご覧になったほうがいい。
この映画の字幕がいい。平沢 真美さんの訳だが、字幕翻訳として最高のもの。
さらにつけ加えておく。このDVDのために山口 路子さんが、「アナイス・ニン」というリーフレットを書いている。これもすばらしい。