1691 私のキャサリン・マクフィー論【5】

 【5】

シンガ-として成功する一方、女優としての活動もめざましい。
2007年、映画、「パラマウント・ガール」に出演。おなじく、ミュージカル映画、「クレイジー」に出演している。

ただし、私がキャサリン・マクフィーを見たのは、残念ながら「キューティ・バニー」(原題The House Bunny/フレッド・ウルフ監督/「ソニー」2008年)だけだった。映画としてはまったくの駄作。どうしようもない駄作だが、こういう駄作に出ていながら、あくまで女優としての輝きをはなっていた。つまり、女優、キャサリンを知るうえでは見ておいたほうがいい。
「バニー」というタイトルは、男性向けのスリック・マガジン、「プレイボーイ」のオーナー、ヒュー・ヘフナーのマンションで、優雅な暮らしをしている「バニーガール」をさす。かつては飛ぶ鳥も落とす勢いだった「プレイボーイ」のオーナー、ヒュー・ヘフナー自身が出てくるオバカ映画。
映画の主演兼プロデューサーは女優、アンナ・ファリス。
タイプとしてはゴールディー・ホーンによく似た喜劇女優だが、ゴールディー・ホーンの天衣無縫な魅力はない。この映画に出たあとすぐに消えてしまった。
image映画の「」(キャサリン)は、頭がカラッポで、大で寮生活をしているうちに妊娠した女子学生。大きなオナカをかかえて、おヘソをだして、キャンパスをねり歩いている。(キャサリンは、ラテックス製の装具をオナカにつけている。これは別の映画でニコール・キッドマンが使ったものという。)オバカ映画で妊娠した女子学生「役」なんか、若い女優としてはうれしくなかったはずだが、まだ無名だったキャサリンは、こんなバカ映画でも、ハリウッドに進出するためには大きなチャンスと見たに違いない。台詞も少ない役だが、後年のキャサリンを予告するような瞬間がある。よく見ればわかるのだが、キャサリンは、感情の微妙な表現や、心理的な「アンブロークン」(不屈さ、不壊(ふえ))な真実をきらりと見せている。
「ハーモニー」は歌がうまい女子大生。この映画で、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」を歌う。ただし、キャサリンはマドンナをそのままカヴァ-しているのではなく、たくみに女子大生、「ハーモニー」の表現にしている。(香港ポップスのダイヤオが、デビュ-・アルバムで、山口 百恵の「夢先案内人」を北京語でカヴァ-しているが、キャサリンのマドンナのほうがずっといい。あるいは、「恋する惑星」(「重慶森林」)で、 クランベリ-ズの「ドリ-ムズ」をカヴァ-した王 菲(フェイ・ウォン)の「夢中人」のすばらしさに近いといってもいい。)
映画のラスト、「I Know What Boys Like」というテ-マ曲を披露するが、これもキャサリンの才能の片鱗をうかがわせるだろう。ただし、この映画のアッパラパ-女子大生から現在のキャサリンを予想した人は誰もいなかったに違いない。