思いがけない「ちゃりもんく」が頭をよぎることがある。よぎるのではなく、こびりついて離れない、といったほうがいい。たとえば、ビックリ シャックリ コレッキリ。
いつ、どこでおぼえたのか自分でも、よくわからない。
なんとなく、気になってしかたがない。
すると、昔の流行り唄を思い出したりする。
お前 待ち待ち 蚊に食われ 七つの鐘の鳴るまでも
こちゃ かまやせぬ かまやせぬ
この元唄は、天保のころにはやった「羽田ぶし」だが、ずっと後年、「コチャエぶし」になった。私がこんなものをおぼえたのは、昭和の初期。幕末の「はやり唄」が、どういうわけか、私の心にこびりついている。これも、ビックリ シャックリ コレッキリ。
お江戸 日本橋 七つ立ち 初のぼり 行列そろえて アレワイサノサ
こちゃ 高輪 夜明けの提灯 消す コチャエ コチャエ
どうしてこんな唄を知っているのか。おそらく、母親が毎日、長唄の稽古をしていたので、自然におぼえたものだろう。もう一つには――私の育った土地柄では、まるで落語に出てくるような八ッさん熊さんが多くて、朝から晩までダジャレの応酬がつづいていた。何かのセリフの句切れに、かけ声やいろいろな「ちゃりもんく」が出てくる。
サッサ 賛成 賛成 賛成じゃ
コリャ お座付き 二あがり 三さがり
だから、昔のはやり唄でおぼえた「ちゃりもんく」が、ヒョイッと口をついて出てくる。