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最近の私はあまり画廊に行かなくなっている。
まだ無名の画家の仕事を知るために、じつにいろいろな画廊を見てきたが、今の私は、もうそんな気力がない。体力もないし時間もない。
こうして、好奇心も薄れてゆくのだろう。われながら哀れなものである。
好きな画家は変わらない。
私の好きな絵は・・見ている私の「現在」のためにこそ描かれている、と感じられるもの。と同時に、私以外のほんのわずかな人々の「未来」のために描かれていると思えるもの。その絵を見るとき、その絵を通して(直接の影響とか模倣にはまったく関係なしに)「過去」に存在したすぐれた画家の仕事を心の深いところで思い起こさせるもの。
つまり、私の内部に賛嘆と同時に、なぜか畏敬に近い思いを喚び起す作品。
たいていの現代絵画は、いつも独創的であろうとしてそれに成功している。しかし、もう少し時がたてば、その作品を見る人は少しも独創的とは見なくなるだろう。