「SMASH」は、スティーヴン・スピルバーグ制作・総指揮のTVドラマ。2012年、NBCが放送した。日本でも少し遅れて放送され、シリ-ズ1部、2部がDVD化されている。
ある時期まで私はマリリン・モンローにつよい関心をもっていたので、このTVドラマを見た。ハリウッド女優、「マリリン・モンロー」の人生をミュージカル化した、TVドラマと知ったから。
私は「SMASH」のファンになった。
ハリウッド女優、「マリリン・モンロー」をミュージカル化するというアイディアからドラマは始まる。脚本家の「ジュリア」(デブラ・メッシング)と、作曲家、「トム」(クリスチャン・ボール)「トム・レヴィット」のチームの共同作業で、この企画は「ボムシェル」というミュージカルになってゆく。
芝居でもミュージカルでも、舞台では何が起きるかわからない。ミュージカルの舞台化について何も知らない私たちは、「SMASH」を見て、はじめて一つの作品がブロードウェイに姿をあらわすまでのさまざまな困難や、行き違いを知ることになる。
したがって、 このドラマは、ブロードウェイのショー・ビジネスのインサイド・ストーリー、あるいはバックステージ・ドラマと見ていい。
プロデューサーは「アイリーン・ランド」(アンジェリカ・ヒューストン)。夫はブロードウェイの大プロデューサーだが、かつてのジーグフリードさながら、若い女優に手をつけては、舞台に立たせてやる趣味がある。「アイリーン」は夫に愛想がつきて離婚して独立するために、「ボムシェル」のプロデューサーになる。
ミュージカルなのだから、主役をきめなければならない。その主役が「マリリン・モンロー」ともなれば、一生に一度というビッグ・チャンスになる。
新人の「カレン・カートライト」(キャサリン・マクフィー)と、長年ブロードウェイで下積みのコ-ラスをやっている女優、「アイヴィー」(ミーガン・ヒルティ)がオーディションを受ける。
このふたりの競争が、そのままドラマの葛藤(コンフリクト)になっている。
だが、大きな資本が投下されなければ、ミュージカルは成功しない。そのため、スター・システムが、音楽の女神の領域にも必要になる。ハリウッド女優が起用されることになって、「カレン」も「アイヴィー」も、「ボムシェル」の「アンサンブル」(コーラス・ガール)になってしまう。
ミュージカル「ボムシェル」は、ブロードウェイで上演される前の、ボストンでの試演(トライ・アウト)にまでこぎつける。だが、主役の「マリリン」をめぐって最後の最後までもつれ、ボストン公演では、ぎりぎりになって「カレン」が抜擢される。これが「SMASH 1」のスト-リ-。全15話。
放送開始から驚異的な視聴率で、「SMASH」は、すぐに続編の制作が決定したという。
「SMASH 1」のラスト、ボストン公演にみなぎっていた、ミュージカル上演までの緊張感、いきいきとしたドラマとしての緊張は――「SMASH 2」では、最初から消えていた。なぜなのか。