もっけの調法。鶴屋 南北の『高麗大和皇白浪』で、島原の廓から逃げた遊女「滝川」を追って「當馬」が、大和路で、偶然、「滝川」を見つける。
「わしもその詮議を頼まれて、わさわさ尋ねて大和路へ、踏みこんだが、勿怪(もっけ)の調法。今日ここで逢うからは、サァ、連れて行きます。ござりませ」
もっけのさいわいは知っていたが、「もっけの調法」は知らなかった。
「當馬」は拒む「滝川」にむかって、
「コレ、お前、マァ、廓にござるうち、逢引のある女郎衆ゆゑ、あののもののですびいても、(中略)成るように、成らぬように散らしたを、よもやお前、忘れはさっしゃるまいが」と、しなだれかかる。
「あののもののですびいても」とか、「成るように、成らぬように散らした」という台詞は、もっけの調法にいまでも使えるかも。
郵政民営化法案で、自民党の執行部が反対派を「あののもののですびいた」が、反対派のなかに「成るように、成らぬように散らした」連中がいた、というふうに。
大南北が苦笑いするだろうなあ。