浅草(六区)の映画館は、関東大震災後に再建されたが、おもなものだけでも、大勝館が一級、日本館、富士館あたりが二級、あとは、帝国館、東京倶楽部、電気館、千代田館、大都映画といった映画館があった。大勝館は封切り館なので、誰かにつれて行ってもらうだけだった。
昔の話である。芝崎町に東洋一の大劇場、国際劇場ができて、コケラ落としのすぐあとで日中戦争がはじまった。
芝居の実演は、松竹座、常盤座、金竜館、花月など。私の少年時代には、すでに玉木座、凌雲座、万盛座、カジノなどはなかった。もとの音羽座、三友館は映画館になっていたが、音羽座が何という映画館になったのか知らない。
落語専門の江戸館はあまりおぼえていないのだが、金車亭にはよく通った。浪曲よりも落語が好きだったが、落語を聞くなら上野に出るほうがよかった。講談では神田 伯竜の怪談のこわかったこと。
山ノ手には行ったことがない。世田谷、杉並と聞いただけで、まるで別世界のような気がした。新宿の武蔵野館に行ったのは、戦後で、外国映画が見られるからだった。