「戦後」、あるテレビ番組の主題歌がレコード会社から出たが、それが「主婦を中心としたモニター」から批判され「要注意歌謡曲」の指定を受けた、とか。
このテレビ番組は、「可愛い悪女たち」というコメデイ・シリーズ。
主題歌は「ウイ・ウ・ノン」。歌詞は、
イヤ イヤ イヤ イヤ イヤだったら イヤ
ひとりぽっちで 夜明けまで なんて イヤ
あたしのぺットちゃんが そういうの
ウイ・ウ・ノン
このドラマが、6月にスタートしていらい、とくに「主婦を中心としたモニター」からの批判が多かった。
レコードは、5月に発売されて、歌詞は3番まで。「民放連」の番組審査会のレコード専門部会では、レコードの市販の段階ではじめて問題になった。
この部会は、東京のテレビ各局からひとりづつ、計10人の委員によって構成され、レコード会社から発売前に提出された新譜を審査する。
問題ありと見なされた場合は、臨時部会を開催し、全員の一致で「要注意歌謡曲」という指定をする。
審査基準は、(1) 男女の情事の露骨な表現
(2) 不倫関係などの肯定的な表現
(3) 卑猥、愚劣、下品な内容
(4) 犯罪の肯定
など、11項目がある。
「要注意歌謡曲」に指定された作品は、
(1) 放送しない
(2) メロデイーは使用してよい
(3) 削除・改善すれば放送してよい
(4) 「民放連」から特別に指示する
この4項によって、放送禁止、または一部使用がきめられる。
このテレビ番組、「可愛い悪女たち」はすでにワン・クール放送されていて、制作局では自主規制の対象としなかった。レコード化されてから、編成部長は、
これまでの放送では、局内ではとくに問題になっていない。いかがわしい、と
いう抵抗もないようだ。ただ。レコードになった場合は、全曲収録ということ
から、論議は別になるだろう。
とコメントしている。
「可愛い悪女たち」の主題歌、「ウイ・ウ・ノン」が、その後どうなったか、私はしらない。
作詞、藤本 義一。作曲、南 安雄。歌ったのは、朝丘 雪路。
私が聞いたのは、45回転のディスク。東芝レコード、TR-1130.
B面は、「くちづけを……」(R・カロッソーネ作曲)。これも、朝丘 雪路。
ここまで読んでくれた人は、エッ、いつの時代の話だろう、と、首をかしげるにちがいない。
1964年(昭和39年)9月。(笑)
テキは「主婦を中心としたモニター」といった、いかにも不特定多数をバックグラウンドにした「世論」をもちだしてくる。こうなったらヤバい。お互いに注意しよう。
歴史的には、明治の「矯風会」から、山高 しげり、奥 むめお などのオバサマに受けつがれ、やがて、昭和初期の「愛国婦人会」、「国防婦人会」にうけつがれるイデオロギーである。これは、1945年に、死滅したはずだった。
ところが、カビのようにしぶとく生き残って、これが、1964年の「主婦」に変身し、やがて「オバタリアン」という種族に進化した。
こういう「主婦を中心とした」ウイルスは、なかなか繁殖力も強力なので、私などはついぞ警戒心をゆるめたことはない。
美人薄命。これは、クソババアは死なず、と読む。(笑)