しばらく前に、ショッキングな記事が出た。
首都直下型の大地震、それもマグニチュード 7 クラスの巨大地震が、今後4年以内に発生する。「東京大学地震研究所」の研究チームの試算である。
4年以内に70%程度
それまで――政府の「地震調査研究推進本部」の評価と南関東の地震発生の確率は
30年以内に70%程度
としている。「東京大学地震研究所」と「地震調査研究推進本部」のどちらの試算のほうが、より蓋然性が高いのか。
それまでにも――政府の防災会議は、茨城県南部、立川断層ラインほか、18系統のマグニチュード 7 クラスの巨大地震の発生を想定している。
東京湾北部を震源とするマグニチュード 7.3 の地震が起きた場合の被害想定は、
最大で、 死者 約1万1000人
建物の全壊/消失 約85万軒
これを聞いたとき、私の反応はどういうものだったか。
まず、第一に、この試算がどういう根拠にもとづくものなのか、結果の確度よりもまず、計算の確実性を知りたいと思った。
文部科学省の「広域的危機管理・減災体制の構築」(研究代表者・林 春男京大教授)の研究によれば――
千葉県浦安市近くの東京湾北部を震源として、マグニチュード 7.3 Kの巨大地震が発生したという想定で、地震の及ぶ範囲は、東京、神奈川、千葉、を中心にして、人口、2千500万人、一千万所帯におよぶ。
この試算で、死者は約1万1000人、負傷者が21万人。
私は――まったく科学的な根拠がないまま――建物の全壊/消失が約85万軒におよぶ被害を受ける状況で、死者の総数、最大で約1万1000人ということがあり得るのだろうか、という疑問をもつ。
私は――これまた科学的な根拠がないけれど――はるかに深刻な事態を想定する。そして、それを――他に適切な呼びかたがないので、カーネージ Carnage と呼ぶ。直訳すれば、大量死、虐殺である。
1945年3月のアメリカによる東京大空襲による死者が、推定で10万。(9万をはるかに越えている)私は、これとヒロシマ、ナガサキの惨事を、20世紀の大量殺戮と考えるけれど、それでも、カーネージ Carnage とは呼ばない。
地震の発生時刻によって、大きく変動することも考えなければならないだろうが、きたるべき巨大地震は、はっきり、メガ・カーネージを想定したほうがよい。
私は、「広域的危機管理・減災体制の構築」の、死者、約1万1000人という推定は信じがたい。
たとえば――今回の東日本大震災で、数十万の帰宅困難者が出た。さいわい火災は発生しなかったが、都内各地で多数の火災が発生した場合、この人たちが逃げまどって、おびただしい死傷者が出ると見たほうが自然だろう。
東京都の試算では、巨大地震の発生による帰宅困難者は、517万人という。
これだけ膨大な人間が、そのまま都内各地の避難所で整然と、一夜を明かすと考えるのは、烏滸の沙汰だろう。
大火が起きた場合、阿鼻叫喚の地獄相が展開するのは確実である。
にもかかわらず、
最大で、 死者 約1万1000人
という空想的な数値はどこから、どうして出てくるのか。
この首都直下型の大地震が、現在の想定される規模なら・・・ もはや未曾有の カーネージ Carnage というのが当然だろう。ただちに非常事態宣言なり、戒厳令が出ると考えよう。みなさんは、カーネージの恐怖を想像できるだろうか。
私は疑う。ここには、なんらか意図的な歪曲がひそんではいないか。 (つづく)