日本にはじめて、ルイ・ジュヴェを紹介したのは「英語研究」昭和七年二月号。
筆者は、ただ、Y.K.と署名している。おそらく、当時、「英語研究」のレギュラー・コントリビューターだった神崎 保太郎だろう、と私は推定する。
この記事は、ガストン・バテイが、コポオのヴュー・コロンビエから出発したような誤りはあるが、やがて「カルテル」を結成するジュヴェ、デュラン、バテイ、ピトエフの活動に目を向けたことだけでもたいへんな炯眼というべきだろう。
ついでに、調べてみよう。
長谷川 如是閑・監修の「世界人名辞典」(成光館出版部/昭和13年刊)には、
ジューヴェ、ルイ Louis Jouvet フランスの俳優、演出家、舞
台装置家。劇に就いて 普遍的な才能を有し、現代フランス劇団に於て有数の人
物。
とある。ただし、生年は書かれていない。コポオについて記述はあるが、デュラン、バテイ、ピトエフの記述はない。
「大日本百科事典」(ジャポニカ/小学館/昭和44年刊)では、「ジューベ」の表記で、20行、「タルチュッフ」を演じたジュヴェの写真も入っている。筆者は、渡辺 淳。
こんな記述にも、時代の流れが感じられる。
(つづく)