嫌いな作家はあまりいない。
個人的に大嫌い、というか、虫酸が走るようなやつはいる。
唐木 順三。こいつだけは許さない。もうひとり。中村 光夫。こんなノは、せいぜいせせら笑ってやればいい。
嫌いなヤツのことは考えるだけでムカつく。
嫌いな作品は――ないわけではない。
例えば、「無限抱擁」。「もめん随筆」。
好きな作品をあげれば――矢野 龍渓の「浮城物語」、若松 賎子訳「小公子」、一葉の「たけくらべ」、漱石の「夢十夜」、中 勘助の「犬」、または「島守」。芥川 龍之介の「秋」、岸田 国士の「澤氏の二人娘」、江戸川 乱歩の初期の作品。村松 梢風の「上海」、小林 秀雄の「Xへの手紙」、永井 荷風の「墨東綺譚」。
私の好きな作家は――渋澤 龍彦、五木 寛之。
好きな作品は――川端 康成の「眠れる美女」、阿部 知二の「地図」、坂口 安吾の「風博士」、伊藤 整の「幽鬼の街」、萩原 朔太郎の「猫町」、横光 利一の「機械」、川口 一郎の「島」、川口 松太郎の「サロメの白粉」……
同世代の、安部 公房の「榎本 武揚」、三島 由紀夫の「卒塔婆小町」、吉行 淳之介の「夕暮まで」、遠藤 周作の「沈黙」。
石上 玄一郎の作品のどれか、小栗 虫太郎の作品のどれか、日影 丈吉の作品のどれかなどをまぜて――私の「世界」は、だいたい完成ということになる。
むろん、友人たちの作品もあげておこう。
西島 大の「富島松五郎の生涯」、若城 希伊子の作品のどれか、鈴木 八郎の「黛」、山川 方夫の「愛のごとく」など。