批評上のクライテリオンなどは、書いて行くうちにあらわれてくる。
おもしろいマンガがいっぱいある。だから、マンガを読みつづけた。
手塚 治虫、石森 章太郎、松本 零士といったビッグネームをとりあげるつもりはなかった。
「ハンサムな彼女」 「変」 「SAY,GOOD-BYE」
「はじめちゃんが一番!」 「ロマンスの王国」 「きもち満月」
「神様の言うとおり」 「ハイヒールCOP」 「ハーパーの秘密」
好きな作家もいっぱいいた。
深見 じゅん 秋本 尚美 瀬川 乃里子 森生 まさみ
陸奥 A子 吉野 朔美 向坂 桂子 森川 久美 ……
ほかにも、思い出せるままにあげていけば――佐伯 かよの、松本 美緒、谷地 恵
美子、山田 里子……
こんなふうに書いてもきりがない。
「サンケイ」の文化面に書くのだから、一般の読者(とくに女性)に読まれるようなテーマがいい。そんな要望もあった。
「おともだち」の高野 文子は、どうしてもとりあげたかった。(今の私なら、近藤 ようこをとりあげるだろう。)
マンガを読む読者ではなく、マンガに関心がない人々にマンガの現状を紹介しよう。
そのためには、さしあたっては、社会派もの、青年マンガよりも、レディース、少女マンガに集中したほうがいい。
例えば――しげの 秀一は「バリバリ伝説」で知られているが、私は、超能力学園ものを描きはじめたこのマンガ家に注目した。
残念ながら、しげの 秀一だけでなく、車田 正美、鶴田 洋久、星野之宣といった作家たちにふれることがなかった。
この頃には、すでに「ぼのぼの」が登場していた。とにかく、毎週、書く対象の選択に困るほどだった。連載も最低、2クール(25回)つづけて、つぎに交代すればいい。
例えば――高橋 留美子をとりあげるのは簡単だが、わずか3枚の原稿で、「めぞん一刻」をとりあげるわけにはいかない。
そこで、「プチコミック」に出てきた「スリム観音」のような作品をとりあげたいと思う。(現在の私は、高橋 留美子にしては失敗作と見るのだか)、この作品のキャラクターは、後年の「らんま1/2」に発展している。そんなふうに考えると、かんたんに見過ごすわけにはいかない。
矢沢 あいも、とりあげたかったひとりだが、この作家が「りぼん」に書いているほかの作品を追っているうちに、私の連載が打ち切られてしまった。
私は、忙しい日常のなかで――気分転換のために、マンガを読みつづけた。とにかく読む。田村 由美、那州 雪絵。
そういうムチャクチャな読みかたをしながら、一方では、純文学からミステリー、SF、同時にイタリア・ルネサンスの文献まで、ひたすら読みつづけていた。
読むことが楽しくてたまらなかった。読むのにあきると、いそいそとマンガを読むのだった。
(つづく)