ジャン・ルノワールの最後の作品、「ジャン・ルノワール小劇場」(1969年/日本未公開)を見た人は少ないだろう。
フィルム・ア・スケッチ(オムニバス)というか、三つのエピソードを集めたもの。それぞれの冒頭、狂言まわしのようにルノワール自身が解説している。途中で中幕のように、ジャンヌ・モローが世紀末の小唄をご披露する。
芸術家の描く軌跡はそれぞれユニークなものだが、とくに劇作家、映画監督の仕事は、高いピークに達したあと、どうしようもなく低いほうに流れることが多い。「小劇場」は、ルノワールという芸術家、半世紀におよぶ大監督の最後の仕事としては、無残なほど演出力が衰えていると思う。
映画を見て胸を衝かれた。いたましい思いがあった。
なぜかしきりに芸術家の運命を考える。芸術家であることの運命を考える。