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私は詩について、あまり知らない。不勉強だったから。

それでも、イエーツなどは、いくらか読んでいる。イエーツは劇作家でもあって、私はイギリスの戯曲はいちおう読んでいたからである。シングや、グレゴリー夫人の戯曲を読んだ動機もおなじだった。
それでも、イエーツの詩に関心をもった。

Knowing one,out of all things,alone,that his head
May not lie on the breast nor his lips on the hair
Of the woman that he loves,until he dies.

我が知れることのひとつは、ひたすらに
頭を 愛する女の胸にやすめたり 唇を 髪につけるなど
なすあたわざることなり ということ
死にいたるまで             (大意)

こんな詩句を読むと、ついついイエーツの恋人、モード・ゴーンのことを想像する。
モードは、終生、イエーツの恋人だった女人だが、イエーツの求婚を拒みつづけた。
そして、別の男性と結婚したが、その後まもなく離婚する。
モードを忘れられなかったイエーツは、わざわざノルマンデイーまで、モードに会いに行き求婚するが、またしても拒否される。

イエーツがはじめてモードに会ったのは、24歳のとき。
モードが、イエーツを振り切って結婚したとき、イエーツ、37歳。
そして、ノルマンデイーにモードを訪れたとき、イエーツ、51歳。

All true love must die,と、イエーツはいう。それは、やがて Into some lesser thing になる。

なぜか、こちらまで苦しくなってくる。

イエーツの場合、恋の苦しみがそのまま詩のみごとさに変わってくる。