新潟に行ったことがある。新潟の新聞にエッセイを書き、テレビに出てマリリン・モンローのことを話した。ずいぶん昔のことだが。
思案小路、甚九郎小路といったゆかしい道筋。西堀通りの由緒あるお寺さん。
鍋茶屋通りで、美しい古町芸者を見かけた。
江戸の儒者、寺門 静軒の『新潟富史』を読むと、昔の新潟の成り立ちや、花柳界のことまで、じつによくしらべあげている。「新潟は多く女を生みまた多く美なり。けだしその土地、陰に位するをもつてならん。妓女は温柔にして、ほぼ京の女に似る。(中略)温にして妬心なく、情客とかりそめの幸いをほしいままにす。これ江都と反す。不義理をとらえて、文句をいうがごときはなし。」
新潟の魅力は私をとらえたが、原稿料も出演料ももらえなかった。ひどい話だ。いまさら「不義理をとらえて、文句をいう」つもりはないが、よくもなめやがったな。その後、二度と新潟に行ったことがない。