私は夏が好き――だった。好きな理由の一つは、女の子の浴衣姿が見られる季節だから。
女たちは、木綿の中形、紗、絽のような、からみ織り、麻の上布などの夏姿にかわる。
ただし、私の好みは、あくまでも浴衣であって、夏御召、薄御召などの女人たちにさして関心はない。
最近、若い女性のあいだで、着物をふだん着として着ている娘さんを見かける。その着物も、それほど高価なものではない。
夏帯にしても、昔なら塩瀬の羽二重、絽がおもだったが、博多や、桐生のように単(ひとえ)帯にみえるものも、じつは中国産の安い生地のものや、リサイクルものの帯という。だから、和服を着るといっても、ふつうのワンピースを買う程度とかわらない。
それならば、ごくふつうの浴衣を着たほうがいい。
日本の女性、とくに浴衣を着ている若い娘の美しさは、いかなる民族の女性美にもおさおさ劣らない。
いや、浴衣姿の日本の女は世界最高の美女なのである。
浴衣といえば、下駄。
塗りゲタ、コマゲタ、日和ゲタ。
ゲタをはいた女の子の素足の美しさに、思わず眼を奪われる。私が久米の仙人だったら、やはり雲間から落ちてしまうかも知れない。
最近、ときどき見かけるジーンズ姿の女の子も、半襟をストールがわりにしたり、帯紐をベルトにしたり。どうやら和のよそおいの見直しが流行しはじめているのか。