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ある生

朝起きると ああ生きているなと思う
きょうもまだ 頭は大丈夫なのだと思う
安心する反面 多少 情けなく思うことでもある
年取るにつれて得た これもまた
ある一つの生の あるひとこまなのだと思う

私の場合も、朝起きると、ああ生きているなと思う。ただし、以前のように、さわやか
な目覚めはない。今日もまだ、くたばっていないらしいと思う。安心などはないし、情け
ないかぎりとも思わない。
くそおもしろくもない現実に腹を立てても仕方がない。できることなら、いろいろな本
を読んで、知らない世界に遊んでいたい。
奄美大島の詩人、進 一男の詩。短い詩だが、おなじように老年の私には、素直に同感
できる。そして、進 一男の詩を読むことで、その日いちにち、心にかすかなぬくもりを
感じていられる。
もう一編、「その日まで」を引用しておこう。

今のこの事は
近い時が片づけてくれるでしょう
焼けつく暑い日々が過ぎて
せめて一輪のコスモスを見るまで
思いを内に秘めて
ともかく生きて行きましょう

この詩が私の心にまっすぐ届くのは、生きているうちに語っておくべきことをごく自然
につぶやいているからである。

進 一男については、以前にも紹介したことがある。
年にほぼ1冊のペースで、詩集を出しつづけている。

詩集「小さな私の上の小さな星たち」  非売品
〒894-0027鹿児島県奄美市名瀬末広町10-1  進 一男