『おさん』のヒロインはいう。
「――九月の朝顔、時候はずれだから見る人もないでしょ、花も小さいし、実もならないかもしれないのに、蕾であってみればやっぱり咲かなければならない、そう思ったら哀れで哀れでしようがなかったわ」
男と女の「哀れさ」を見つめること。山本 周五郎は、終生、そういう思いを生きた作家だった。
男がいて女がいる、というのは悲しいものだ、という思い。
私が山本 周五郎が好きなのは、作中人物にいつもそういうせつなさが感じられるからなのだ。
『おさん』のヒロインはいう。
「――九月の朝顔、時候はずれだから見る人もないでしょ、花も小さいし、実もならないかもしれないのに、蕾であってみればやっぱり咲かなければならない、そう思ったら哀れで哀れでしようがなかったわ」
男と女の「哀れさ」を見つめること。山本 周五郎は、終生、そういう思いを生きた作家だった。
男がいて女がいる、というのは悲しいものだ、という思い。
私が山本 周五郎が好きなのは、作中人物にいつもそういうせつなさが感じられるからなのだ。