テレビで、「坂の上の雲」(司馬 遼太郎・原作)を見ている。
伊予出身の秋山 好古、真之兄弟と、親友の正岡 子規を中心に、明治という時代の息吹を描いた大河ドラマである。
秋山 好古を阿部 寛、秋山 真之を本木 雅弘、正岡 子規を香川 照之。
子規は大学を中退して、新聞に勤めるようになった。
私は子規を勉強したことがあって、テレビを見ているうちに、この時期の子規の作品を少し読み返してみた。
明治25年12月、子規は内藤 鳴雪といっしょに、高尾山に「旅行」している。
本郷から、新宿まで歩いて、新宿から汽車に乗る。
荻窪や 野は枯れはてて 牛の声 鳴雪
汽車道の 一筋長し 冬木立
八王子から府中まで歩く。
鳥居にも 大根干すなり 村稲荷 鳴雪
府中から、国分寺まで。ここで汽車を待つ。新宿に着く頃には、「定めなき空淋しく時雨れて、田舎さして帰る馬の足音忙しく聞ゆ」ということになる。
新宿に 荷馬ならぶや 夕時雨 子規
この小旅行で、子規が詠んだ5句は、全部、馬糞ばかり。
馬糞の ぬくもりに咲く 冬牡丹
鳥居より 内の馬糞や 神無月
馬糞の からびぬはなし むら時雨
子規は――風流は山にあらず水にあらず、道ばたの馬糞累々たるに在り、とうそぶいている。若者らしくていいや。