指揮者の小沢 征璽は、オペラの指揮をつづけて、今年で40年になるという。2002年から、ウイーン国立歌劇場の音楽監督をつとめていることは誰でも知っている。
この9月からのシーズンが、最後になるとか。
チャイコフスキーの『スペードの女王』、『エフゲニー・オネーギン』をつづけて指揮する。
来年には、『フィガロの結婚』を上演してから、また『エフゲニー・オネーギン』を指揮して、ウイーンに別れを告げるとか。
最近のインタヴューで、
ウイーンは大変だけれど、オペラはすごくおもしろい。もっと早く始めれはよか
ったと後悔している。
と語っている。
なんでもないことばだが、私は感動した。
ウイーン国立歌劇場の音楽監督という仕事が、どんなに「たいへん」なものか、私たちの想像を絶しているだろう。そのことに感動したのではない。
ウイーン国立歌劇場の音楽監督として、「オペラはすごくおもしろい」といい切っている。はじめて、ザルツブルグでオペラをふって、すでに40年のキャリアーをもっている。「もっと早く始めればよかったと後悔している」ということばに、「思想」の成熟を読むことはできよう。しかし、あれほどの成果を実現しつづけた大芸術家が、(たとえ、半分ふざけていたとしても)「もっと早く」おのれの資質に気がついていたら、と慨嘆している。小沢 征璽のことばに、きみは何を見るだろうか。
小沢 征璽は語っている。
オペラの指揮は、とにかく勉強。チェコ語など得意でない言語のオペラをふると
きは、数カ月前から、毎朝、30分から1時間は歌詞を勉強する。
やっぱり、本当の芸術家は違うなあ。
私の感想だが――こんなふうにいいかえることができるかも知れない。小沢 征璽とは何か。
小沢 征璽、音楽のすべてをオペラに収斂する思想。