(つづき)
この1927年、レナード・シルマンが、ブロードウェイ・ミュージカルに登場する。シルマンは、前年、バサデナのショーをプロデュースしていた。
彼は、リー・シューバートの推挽で、ブロードウェイに進出する。(リー・シューバートは「シューバート劇場」の経営者、大プロデューサー。女優、エルジー・ジャニス、映画スター、メァリ・ピックフォードのパトロンだった。)
いろいろな曲折があって、レナード・シルマンが、ブロードウェイで「ニュー・フェイシズ」New Faces というショーを出す。
キャストは、24人。
主演の一人に、イモージェン・コカ。彼女は、1925年に登場しているので、「ニュー・フェイス」ではなかったが、「エルフィン」(小妖精)の「役」がぴったりだった。
ほかの出演者は、作曲、シンガーの、ジェームズ・シェルトン、ダンサーのチャールズ・ウォルターズなど。
さらには、歌手のルイーズ・テデイ・リンチ。のちに作家になった女優、ナンシー・ハミルトン。(彼女は、この時期、キャサリン・ヘップバーンの『戦士の夫』のアンダースタデイをやった。だから、この「ニュー・フェイシズ」では、キャサリン・ヘップバーンのモノマネをやってみせる。)
オーディションを受けにきた役者で、最後の最後まで残ったふたりの若者がいた。ふたりとも、才能はあるし、役柄もぴったりだった。
どちらを残すかきめかねたプロデューサー、レナード・シルマンは、とうとう、ふたりにコイン投げで、採用、不採用をきめることにした。
結果は――ヘンリー・フォンダが採用された。
落ちたのは、ジェームズ・スチュアート。
ヘンリー・フォンダは、『水曜日にきみを愛した』というドラマで、ハンフリー・ボガートのアンダースタデイをやったあと、まっすぐにこの「ニュー・フェイシズ」のオーディションを受けたのだった。
後年、このふたりはハリウッドの大スターになる。
つい最近、トニー賞の受賞式の中継(’09.6.28)を見ながら、ふと、そんなことを思いうかべていた。