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マイケル・ジャクソンが亡くなった日に、女優のファラ・フォーセットが亡くなった。(’09.6.25.)1947年生まれ。「戦後」の女優だった。

ファラ・フォーセットも、もう、誰もおぼえていないだろう。

いちばん最初にファラ・フォーセットを紹介したのは、私だった。その頃、「日經」が出していた雑誌にエッセイを連載していたので、たまたまアメリカでいちばん人気のある女優としてとりあげた。たしか、1973年頃ではなかったか。
TVの「グレート・アメリカン・ビューティー・コンテスト」あたりの評判を聞きつけて、この女優に関心をもったのだろう。いまでは、自分でもわからなくなっている。

当時の彼女は、ファラ・フォーセット・メジャーズだったが、私はあえて「ファラ・フォーセット」で紹介したのだった。このあたりの意味、理由はわかってもらえるだろう。私は――遠からず、いずれ彼女は離婚するものと見たのだった。

ファラは美貌だった。あまりに美貌の女優は、どうも成功しないもので、たとえば、「薔薇のスタビスキー」で登場したシドニー・ロームのような美女も、一時期スターにはなったが、女優としての生命は長くなかった。
同じように、ファラと前後して登場したイスラエルの女優、ブリジット・バズレン(1944―)も、セシル・B・デミルの「キング・オブ・キングス」では「サロメ」を演じ、リチャード・ソープの「ガール・ハント」(ともに1961年)では、スティーヴ・マックイーンと共演して、圧倒的な美しさを見せながら、すぐに消えている。
サイレント映画の、マッジ・ベラミー、メァリー・ブライアン、エラ・ホール。
みんな美貌の女優たちだったが、いずれも途中で消えている。

ファラ・フォーセットも、後年「チャーリーズ・エンジェルズ」のめざましい成功で注目されたが、残念ながら女優としてはほとんど記憶に残らなかった。

今年の5月、末期ガンと闘うファラのドキュメントがアメリカで放映された。
あれほど美貌だった女性が見るかげもなく衰えながら、必死に病気と闘っている姿に誰もが感動した。日本では放送されていない。かりに放送されても、私は見ないだろう。むしろ、ファラが輝いていた「2300年未来への旅」(Logan’s Run)(76年)を見たい。この映画のヒロインは若いジュニー・アガターで、ファラは残念ながらワキにまわっているのだが。
しかし、美しさではジュニーをはるかに越えていたと思う。

俳優のライアン・オニールとは男の子をもうけたが、やがて関係を清算した。その後も友人として交際をつづけ、死ぬ3日前にライアンの求婚を受け入れたという。

胸を打たれた。