ある人生相談。
20代男子学生。アルバイトで知り合い、2年前から付き合っている彼女がいます。彼女は学校を卒業し、地元に帰りました。私はもう1年、学生の身。
「1年後に再会し将来は絶対に結婚しよう」と約束しました。
ところが、私は、彼女の代わりにきたアルバイトの女性に一目惚れしてしまいました。これまで女性との出会いが少なかったので、今の彼女が一番だと思っていたのです。でも、新しく来た女性のほうが、彼女より好きになってしまいました。
約束を破るのは私の性に合いません。それに今でも彼女は私のことを好きでいてくれます。そんな彼女に対し、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
女性に会うたびにすぐにほれてしまうようでは、将来、結婚しても長続きしないでしょう。そう思うと結婚が怖くなりますが、一生独身でいるのもいやです 。
ほれっぽいこの性格を直すのには、どうしたらいいでしょう。今後、彼女や、一目ぼれした女性とはどのように接していけばいいのでしょうか。
ある大学教授の回答。
恋愛関係で動きがあれば、誰かが傷ついてしまうことになります。
まず、申し訳ないという理由で付き合いを続けるのはやめましょう。いい人であるというあなたの自己イメージは守られるかもしれませんが、このまま彼女と付き合い続けるのは彼女にとってかえって酷です。直接会って、あなた自身の気持ちを確かめてください。やはり彼女が自分にとって必要だと感じればそれでよいし、彼女に会っても新しい女性のほうが好きだという思いが強ければ、関係を解消したほうがふたりのためです。
身近にいる女性がすてきに見えるのは自然です。ほれっぽいのがいけないのではなく、「ほれる」という感情に振り回されるのがいけないのです。ほれても元の相手が大切だと思えばその感情を表に出さない。ほれるほうに賭けるならアタックする。ただ、あなたが好きでも、相手があなたを好きになるかわかりません。その時は、潔く、寂しさを味わってください。
さすがだね。この先生のソツのないお答えには、おもわず笑ったぜ。
この学生は、自分を「惚れっぽい」という。好きな彼女ができて幸福だった。ところが、彼女は故郷に帰って行った。きみの前に別な女性があらわれた。きみは、たちまちその女性が好きになってしまった。そんなノは、「惚れっぽい」とか「惚れっぽくない」といった話ではなく、ごく当たり前のことなのだ。
「惚れっぽい」というノは、自分のまわりにいる女たち、自分の前に姿を表した女たちに、たちまち反応して、すぐにおネツをあげる、言い寄る、そういう男のことで、きみのように、「2年前から付き合っている彼女」がいなくなったとたんに、新しい女が好きになる程度の男は「惚れっぽい」などというほどのモノじゃない。
アーヴィング・シュールマンの青春小説に、そういうハイ・スクール・バブーンが登場する。やたら「惚れっぽい」若者で、テレビ・シリーズでも、毎週、違う女の子にいい寄ってはフラれていたっけ。
ただし、この学生は、自分が「惚れっぽい」という。そういう自意識をもっているのはいい。
私は「人生相談」を読むのが好きだ。私が回答者になったとして、いつも相談者の悩みに対して、あたたかいまなざしをもつかどうか。心理学でいう、相手の立場に立つ態度、カウンセリング・マインドなどは、はじめから私にはない。
なにしろ、モンテーニュ、ラ・ロシュフーコーから、オスカー・ワイルド、サマセット・モーム、ヘンリー・ミラーなど、手あたり次第に読みふけってきたせいで、私なりの人生観ができあがってきた。だから、「人生相談」を読むのが好きなのは、えらい先生の「人生相談」を読むのが好きだということになる。
笑えるから。