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 私の「宝塚」。
 淀 かほる、明石 照子、毬 るい子たち。もっともっとたくさんのスターたちをおぼえているけれど、名前だけははっきりおぼえていながら、顔や姿は記憶が薄れている。

 へんなことだが――春日野 八千代、越路 吹雪までさかのぼったほうが、かえって忘れていない。

久慈 あさみ、淡島 千景、南 悠子、寿美 花代あたりの時代になると(久慈、淡島、寿美の映画はおぼえているけれど)、どういうものか那智 わたる、深山 しのぶなどの舞台のほうが鮮明に思い出せる。
 いい舞台だったかどうかよりも、おそらくその頃に見た回数の多寡によるのだろう。

 されば――これより女護の島にわたりて、つかみどりの女を見せん、といきたいところだが。
 本城 珠喜は美女だったなあ。ああ、去年の雪、いまいずこ。
 ほかにもたくさんの美男美女がいた。……
 美山 しぐれ、緑 八千代、星空 ひかる、平 美千代、小文字 まり、大路 三千緒、都路 のぼる……
 桜も散るに嘆き、月はかぎりありて入佐山……
 名前が出てきても、それぞれがどんな女の子だったか、目鼻だちさえよく思い出せない。中村 光夫のセリフではないけれど、年はとりたくないものです。(笑)

 奥山は六区(浅草)のコメディアンたち、新派(新劇)の舞台役者ともなれば、まだしもおぼえている。おかしな話だが。

 かなりボケがきている作家がおかしなことを書いても、「コージートーク」の読者のみなさん、どうかお咎めなさいませんように。なにせ、認知症直前作家なのだからお見逃しあれ。(笑)

 テレビで宝塚音楽学校の入学式にのぞむ女の子たちを見た。たまたま、安蘭 けい、遠野 あすかの最後の公演を見て、この新入生たちから、やがては安蘭 けいや、遠野 あすかたちが出てくることを考えて、なんとなく感動した。
 つまり、私はそんなミーハーなのである。